【Misskey】企業の皆さんへ、今だからこそFediverseしてみませんか?

Fediverseに関する事柄は様々なニュースメディアにて紹介されていると存じます。しかし、どれもユーザー目線の記事ばかりで、企業が参入する場合のメリット・デメリットや活用方法についての記事をあまり見ません。ぜひ、企業の皆様にも広報活動の場としてFediverse、特に日本企業であればMisskeyの利用を検討してほしいと思いこの記事を書いてみます。

そもそも「Fediverse」って何?

様々な記事で説明されているので、詳しいことはそちらを参照していただけると理解できるかと思います。

Fediverseの中でも特に多く使用されている通信プロトコルはActivityPubです。ここでは、ActivityPub以外の言及はしません。

近年、特に若者は様々なSNSサービスに分散し始めている

現在、様々なSNSサービスがあるが、これまでは2つや3つほどのサービス、特にスマートフォンに最初から入っているアプリによる寡占が続いていました。これが、徐々にインフルエンサーが利用している、世界で話題になっているアプリに対してもユーザーが興味を持ち始めているところに、大手サービスに対する不信感等が重なり、個人が使いやすいサービスに少しずつ分散し始めているように感じます。

企業としては、様々なユーザーにアピールするために各サービスごとに広報アカウントを運用しなくてはならなくなり、少し不便を強いられる時代になったのかもしれません。

X(旧Twitter)のスーパーアプリ化による懸念点

XのCTOであるイーロン・マスク氏が、Xをスーパーアプリ化を目指すために仕様変更、またその計画を主張しています。今後、それらの計画によって企業、一般ユーザーに関わらず様々な影響が生じるのではないかと噂されています。また、マスク氏はそのキャリアから改革主義者として知られており、Xの変化を強行してくることは容易に想像がつき、利益を得るユーザーと損失を被るユーザーに分かれるであろうと予想されています。

個人情報登録の必須化に伴う匿名性の低下

個人情報を登録しなければならなくなり、匿名での活動が難しくなるのではないかということを指摘するユーザーがいます。現時点で匿名性が低下するような直接的な計画はまだ発表されておらず、信憑性は薄そうです。しかし、日本でのFacebook利用率の低さからも分かる通り、日本人ユーザーは一定の匿名性をサービスに求めているため、仕様変更によってはユーザー離れにつながる恐れがあります。

決済サービスの追加に伴うクレジットカード会社による圧力の懸念

Xは将来的にサービス内で商品の売買等を行えるようにする予定です。ここで懸念されることはXとクレジットカード会社の関係がより密接になることです。近年、表現などに対するクレジットカード会社からの圧力に対する問題が顕在化しています。Xが決済サービスに力を入れるということは、この流れがXにも起こる可能性が非常に高くなるのは十分に考えられます。ひどい場合、クレジットカード会社に不都合と思われる商品を完全に排除させるようXに働きかける……なんてシナリオもあるかもしれません。

決済サービスの追加に伴うサービス利用の年齢制限の引き上げ

決済サービスを利用する場合、クレジットカード等の登録が必要になります。これがXの利用の必須事項になるのではないかという噂もあります。こうなると、Xを利用できる年齢の制限が13歳以上から引き上げられる可能性もあることになります。企業としては中高生層に対してのX内でのアピールが難しくなってしまう可能性があります。

サービス有料化の噂

たびたび噂されるXサービスの有料化。実現した場合、ある程度のユーザー離れは避けられないことは容易に想像できます。様々な場所でアンケートが行われていますが、知る限りではどこもおよそ4~6割のユーザーが(月額料金にもよるが)Xをやめるといった回答をしています。

アメリカ法やEU法に伴う規制の強化

これはXとは直接関係があるわけではないですが、海外(とくにEU)では表現等に対する規制を強化する流れが起きています。日本では全く問題ない商品・サービスやそれを宣伝するための手法に対して、現地法を理由にアカウントの凍結などの制裁を受ける可能性は十分に考えられます。「日本の法律は順守しているのに……」という言い訳は当然受け入れてもらえないことに留意しなければなりません。

これは公式による見解を得られずあくまで推測になりますが、日本(東アジア)と海外(西洋)での齟齬による不当な規制例が存在しています。

  • 成人済の日本人女性の写真が、未成年の少女の写真とみられてしまい規約違反扱いされてしまった
  • SDキャラクターの萌えイラストを使用したら、幼児のキャラクターと見られてしまいアカウント凍結の予告を受けてしまった

他、様々な事例から日本で許されている表現をしたい場合は日本国内法に基づいて運営しているサービスを使うべきではないかといった考えが少しずつではありますが広まりつつあります。

Fediverseにて公式アカウントを運用している例

WikipediaやBBC、Mozilla等、海外では少しずつ公式アカウントを運用する企業が増えています。

日本でも、災害情報発信サービス「特務機関NERV」が独自サーバーから災害情報の発信を行っています。

追記:公式アカウントがある一方、公式アカウントがないことを理由に非公式のアカウントもかなり多く存在します。中には非公式かどうか不明瞭で自分でも分からないものもありました(記事に書いてましたが削除しました)。認証をしていないアカウントが公式のものであるかどうかを簡単に判断できないのはFediverseのデメリットかもしれません。ただし、現在のXでも(過去にはできたが……)、そのほかのサービスでもなりすましはあるため、インターネット全体の問題とした方がよいのかもしれません。(対策方法はあるにはあるのですが)

Fediverseを利用した広報をするメリット・デメリット

Fediverse、特にMastodonやMisskeyといったミニブログサービスを利用した広報・アピールを行うメリットとデメリットを紹介します。

メリット

延べ1000万人にアプローチできる

FediDBによれば現在Fediverse上の全ユーザー数は世界で1000万人を超えています。2022年後半から急速にユーザー数が増え始め、現在も右肩上がりを続けている絶賛成長中のコミュニティです。ユーザーの中にはXアカウントを持っていない人も少なくなく、新しいユーザーに向けてアピールすることができます。

規約や制限はサーバーごと

規約や制限はサーバーごとに決めることができます。利用者は活動しやすいサーバーを選ぶだけです。

気軽にサーバー間の移動ができる(引っ越し機能)

利用しているサーバーが合わなくなったらフォロワーリスト含めてアカウントをまるっと引っ越しすることができます。これにより、不当な扱いを受けていると感じても無理をしてでもそのサービスを利用しなければいけないといったことはありません。

独自サーバーを運用すればほとんどの制限を受けない

自前のサーバー上でサービス・アカウントの運用を行えば、ほぼ制限を受けずに情報発信を行うことができます。当然ですが、VPSサーバーを利用している場合はそのサーバーの規約を守ること、スパム紛いの行為を行えば他のFediverseサーバーからブロックされる可能性があることに留意しなければなりませんが……

Xとほぼ同等の機能を使える→広報用の文章や画像をそのまま流用できる

文章や画像の投稿、RT機能やお気に入り、フォローやミュートといった機能が使えるため、Xでのアプローチ方法をそのまま流用できます。Fediverseのために新しく文章を考える必要はありません。コピペで十分です。

デメリット

一般層のFediverseに対する理解度の不足

Fediverseでどのようなことができるかまだ理解しきれていないユーザーやFediverse外の人がまだ多い印象です。異なるサーバー、例えばあるMastodonサーバーから別のMisskeyサーバーのアカウントを検索したりフォローしたりすることが可能であるという基本的な機能すらあまり知られていないようで、まだまだユーザーの成熟に時間がかかりそうです。

サーバー内のコミュニティを理解する必要がある

他者が運営しているサーバーの中には、テーマを決めていたり独自のルールを定めていたりするものもあります。他者のサーバーでアカウントを運用する場合、そのコミュニティのテーマや雰囲気に則していないアカウントが企業公式だったりした場合には尚更白い目で見られてしまうおそれがあります。サーバーという特性上、比較的閉鎖的コミュニティになりやすいことがFediverseの欠点の一つと言われています。より自由な広報活動をしたい場合は、自社運営できるサーバーを持つかそのような活動を容認してくれるサーバーを吟味する必要があるようです。

アカウントを認知してもらうための努力が必要

ありとあらゆる全てのことに言えることですが、新しいことを始めても何もしなければ認知してもらうことは不可能です。特に自社運営サーバーを使った場合、そのサーバーの利用者は自社アカウントだけです。アカウントを認知してもらうためにはそれ相応の努力が必要不可欠になります。それさえ乗り越えられれば、自分たちのルールでできる最高の情報発信所が完成することでしょう。

なぜMisskeyを勧めたいか

Misskey®は、日本人のsyuilo(しゅいろ)氏が開発しているオープンソースの分散型ソーシャルネットワーキングプラットフォームです。2014年に運用開始、2018年にActivityPub対応しています。なぜこのプラットフォームを勧めたいかは以下の通りです。

多機能かつ開発が盛んである

Misskeyは多機能で様々な運用方法も可能です。さらに現在でも開発が盛んで、改修や最適化が続けられています。もちろん、APIも無料で利用できます。

日本語ドキュメントがあり、サポートも日本語

当然日本語ドキュメントがあり、不具合対応も日本語でできます。開発者本人もだいたい日本語で話しています。また、一部国内VPSサービスの中にはMisskeyのセットアップテンプレートがあり、簡単にサーバーを立てることができます。

日本最大のサーバー「Misskey.io」

サーバーの一つ、Misskey.ioは日本で運営されているサーバーです。全Fediverse上で日本で最も多く、世界で二番目に多いユーザー数を誇ります。日本人ユーザーはMisskeyのシステムに慣れているため、このプラットフォームを選びやすいです。

日本発のITサービスを支援しようという流れ

日本のITに対する問題はかねてから指摘され続けてきました。一方、それに対して技術者や企業・グループへの支援は行われず問題提起の口弁ばかりでした。しかし今、Misskeyの支援の流れが少しずつではありますが実行されつつあります。コミッションサービス「Skeb」を提供するSkebはMisskeyのスポンサーになることを発表しました。また、インターネットサービス事業をしているエックスサーバー株式会社はMisskeyの開発支援の発表、開発環境の提供を行いました

Misskeyを通じて少しずつ国内ITの流れが変わりつつあります。Misskeyを利用する、開発を援助することは国内発SNSの発展、ひいては国内ITの発展の礎になるかもしれません。ぜひ日本の企業の皆様はMisskeyを利用してみてはいかがでしょうか。

広報としてのMisskey運用方法

ではどのようにMisskeyを活用していけばいいのか、その運用方法の一例を書きます。

できることは基本的にXと同じ

機能からもできることはXと同じです。文章を投稿する、画像を投稿する、動画を投稿する、キワドいコンテンツにはNSFW(センシティブ設定)を行う、RTする、URLを貼って誘導する、ハッシュタグ機能を使う……

トレンドやおすすめといった機能はXほど充実はしていないため(カスタマイズすることで実装しているサーバーもありますが)、トレンド頼みの広報は機能しません。しかし、RTの重要性、ハッシュタグトレンドは同じだと思われます。さらに、Misskeyクライアント同士であればカスタム絵文字機能によるリアクションも投稿内容の盛り上がりには必要不可欠なものとなります。場合によっては、Xのいいね機能の10倍以上のリアクションをもらえることも珍しくはなく、ユーザーの生の反応がもらいやすいのが大きな利点です。ポジティブな反応をもらえる一方、ネガティブな反応もできるため、投稿内容には注意が必要です(何においてもそうですが)。

1. 他者サーバーで公式アカウントを利用する

もっとも低コストで気軽にできる方法は、アカウント登録がオープンになっている他者のサーバーを利用することです。投稿内容がローカルタイムラインに載るので、同じサーバーにいるユーザーに簡単にアピールすることもできます。ただし、そのサーバーのテーマやルールに則した投稿でなかったり、過剰で無駄な投稿、不誠実で迷惑な投稿を繰り返したりすると同じサーバーにいるユーザーから白い目で見られたり、顰蹙をかうことがあることに留意しなくてはなりません。また、サーバーの管理者の意向にも従わなくてはなりません。

そもそもFediverseのことに関してまだ理解していない場合は、試しに個人用アカウントを登録して使ってみるのも良いかもしれません。使用感、コミュニティの空気感を知ることは非常に重要です。

2. 自社でサーバーを開設、運用する

独自にサーバーを開設することは、自由な情報発信をするという点においてかなりの優位性を持っています。ドメインもアカウント名も投稿内容も制限はありません(Fediverse上でのマナーはまもるべきです)。コミュニティの雰囲気に合わせて空気を読む必要すらありません。ただし、開設しただけでは当然誰にも知られません。ホームページや他サービスで「広報の広報」を行う必要がありますが、一定のフォロワーを手に入れればあとはユーザーの力を頼ることができます。

上手な活用方法としては、公式広報アカウントは独自サーバー上で、一個人のアカウントをオープンな他者サーバーに置いて、普段使いをしつつたまに公式アカウントのことを宣伝したり広報アカウントの投稿をRTしてあげることをおすすめします。個人のアカウントを持つことはユーザーとの距離を近づける一助にもなります。

3. 他社と共同のサーバーを持つ

サーバーコストの削減を考えたとき、真っ先に思いつくのは同じようにサーバーを持ちたい他社と共同のサーバーを持つことです。費用を分割できれば、低コストで独自サーバーを持つことができます。ただし、誰が管理をするのか、投稿内容に対する決まりをどうするか等取り決めを作らなければ、トラブルに発展してしまう可能性もあることに気を付けなくてはなりません。

また、サーバーを持つということはプラットフォームのアップデート等の管理をしなくてはならないということにも注意が必要です。

さいごに

Fediverseを利用する、そしてMisskeyを活用する、支援することのメリット、活用方法について拙筆ながら書き留めてみました。新しいユーザーに対してアプローチできるだけでなく、国内ITサービスを利用して発展の支援ができるということは、企業にとって大きなメリットではないでしょうか。

企業の皆さんへ、今だからこそFediverseしてみませんか?

追記

追記その2

今まで当ブログを閲覧する人は週2、3人程度でしたが、この記事を書いた後、ブログに関するノートが一日約200リノート約300リアクション、そしてFediverse上からこのブログを閲覧した人の数が約200人を達成しました。それによって検索からくる人、Xなどの他のSNSにも二次拡散されるようになりました。提案記事での成果ですが、Fediverseにも一日でこれだけの拡散力があることを身をもって証明できたのは大変喜ばしいかぎりです。